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【クリニック経営の落とし穴】医院・クリニック開業が失敗した事例

【クリニック経営の落とし穴】医院・クリニック開業が失敗した事例

クリニックの開業をするということは、ドクター自身が「経営者」になることを意味します。何でも開業コンサル任せにするのではなく、納得がいかないことは自分で考えたり、調べたりしなければいけません。

その意識が薄いと、最悪、廃院・自己破産に至ることもあるのです。

今回ご紹介するのは、多額の借り入れ、過剰投資、杜撰な事業計画の結果、開業後4年ほどで資金繰りが悪化し、廃院を余儀なくされ、院長自身も自己破産に陥った事例です。

施設とクリニック開業資金計画の概要

(施設概要)
・診療科目:産婦人科 19床
・開業形態:土地購入、新規建築
・院長 40代

(開業資金計画)
・土地 約10,000万円
・建物 約50,000万円
・医療機器 約10,000万円(リース)
・備品 約5,000万円

自己資金 5,000万円
借入金 60,000万円

クリニック開業時の背景

私が、ある顧客からのご紹介で「Aクリニック(仮)」についての話を院長から聞いたのは、約10年前のことです。その段階で、既に資金繰りは末期的な状態でした。

60,000万円の借入金がある場合、おおよそ15年返済で月々400万円以上を返し続けなければいけません。さらに月当たり200~250万円の固定費、50万円の生活費が(院長は結婚をしていました)かかると考えると、毎月650~700万円は収入が必要になるわけです。

ベッドが患者で埋まる状況が続いていれば、月々700万円の収入を得ることは、特別難しいことではありません。しかしAクリニックの場合、患者がなかなか増えず赤字続きでした。追加融資を受けて、返済期間を延ばしてもらう交渉もされていたようですが、結局、開院4年ほどで、廃院・自己破産を余儀なくされました。

 

クリニック開業が失敗した4つの原因

今回の事例における失敗の原因は、4つ挙げることができます。

(1) クリニック開業場所の選択ミス

Aクリニックから500メートルくらいの距離には、別の産婦人科がありました。患者が来る見込みがあるのか不明瞭な場所といえます。

(2) 内装に過剰投資している

Aクリニックの内装はとても豪華で、フロントはまるでホテルのよう。床も大理石と思われる素材が使われており、かなりのお金をかけていることが分かりました。

(3) 融資額が大きすぎる

約10年前は開業ブームということもあり、各金融機関の融資姿勢が緩く、平均的な開業資金の融資額は今よりも大きかったという事情があります。そのため、60,000万円もの借入が可能となってしまったのです。

(4) クリニック開業コンサルの事業計画が杜撰

開業に関しては、開業コンサルタントがコーディネートしていたようです。投資額の大きさを見るに、事業計画は杜撰だったのでしょう。院長は、真面目な性格ではありましたが、経済感覚に疎く、おとなしい方でした。おそらく、開業コンサルに上手く乗せられてしまったのだろうと想像がつきます。

クリニック開業の際は、「経営者」になるという意識を持つべき

いくら投資額が大きいといえども、産婦人科は絶対的に不足しているのも確かです。それにもかかわらず、廃院・自己破産をしてしまったということは、開業コンサル、金融機関、そして院長自身に慢心があったことは否めません。

今回のような失敗をしないためには、経営を「人任せにしない」ことが最も重要だと考えます。クリニックを開業するということは、ドクターが「経営者」になるということです。このことを、常に意識する必要があります。

クリニック開業を成功させるための3つのポイント

では開業を成功させるには、具体的にどのようなことに気を付ければいいのでしょうか? 以下にまとめてみました。

(1) クリニック開業コンサルの言うことを鵜呑みにしない

開業コンサルの言っていることが本当に正しいのか、ご自身で考えるようにしましょう。納得が行かないのであれば、きちんとした説明を求めるようにしてください。セカンドオピニオンとして、信頼できる他の開業コンサルに相談したり、もうすでに開業されている先輩方に話を聞いてみたりするのもいいでしょう。

(2) クリニックを開業すべき場所を見極める

「診療圏調査」を行い、開業地にふさわしい場所かどうかをご自身の目で確認しましょう。現地に行って、「車や歩行者の交通量」や「競合の医院は、自院からどのくらいの距離にあるのか」「競合医院の患者数」「競合医院の強み、弱み」といったことは、徹底的に調査するべきです。

(3) 自院の強み・ウリを明確にする

他の医院との差別化を図るために、自院のコンセプトをはっきりとさせましょう。他と比べて優れている点や、患者さんに選んでもらえるようなウリを打ち出していかなければいけません。「営業の方法」も考えて、しっかりとしたビジネスモデルを持つ必要があります。

自院のコンセプトについて聞かれたとして、明確に答えられないのであれば、安定経営はできないと考えたほうがいいかもしれません。

まとめ

今回のケースを見ての教訓は、開業は「自己責任」だということです。

開業には多大なリスクがともないます。成功できるという確信が70%以上ないのであれば、踏み切るべきではありません。これから開業を考えている先生方には、ぜひこの記事を参考にして、「人任せにしない」クリニック開業をしていただければと思います。

 

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