【第7回】保険営業体験記「個人診療所が抱える経営的課題」
はじめに
はじめまして。私は、開業医専門FPとして活動をしております「三橋 泉」と申します。1997年から現在まで、開業医のビジネスパートナーとして、ドクターに的確な課題解決の方法をご提案させていただいております。
今でこそ、約100名以上の院長先生とお付き合いをさせていただいている私ですが、25年前、保険会社に入りたての頃は、新規開拓が全くうまくいかず何度も挫折しそうになりました。他の業界に行こうかと、転職活動をしたこともあります。
しかし、必死に営業に取り組んでいく中で、自分なりのコツをつかむことができ、「医療マーケット」に特化し保険営業パーソン、FPとして実績を重ね、最終的には起業することもできたのです。
保険会社に転職したばかりの私のように、「開業医の新規開拓がうまくいかない」「開業医を顧客にしたいけれど、どうしていいのかわからない」という保険営業パーソン、FP、あるいは、独立したばかりの税理士の方々に、私の経験が少しでも役に立てればという思いで、ホームページを開設することにしました。
今回の記事では、ドクターマーケットを対象とした保険営業で成功するための、「長所と短所」について解説をしましょう。
営業対象の条件は、成長期・安定期の個人診療所
前回の記事で、私たちがターゲットすべきは、以下の条件にあてはまるクリニックであると解説しました。
* 売上が右肩あがりの時期である「成長期」、もしくは、売上が頭打ちになり横ばいになっている「安定期」、いずれかに入っている
*個人診療所である
もっと具体的に言いますと、開業してから「約4年~10年」が経過し、保険診療収入が「年間6000万円」を突破している個人診療所が狙い目です。
このような、順調に医業収入が上昇している、或いは安定している個人診療所は、十分な売上があるにも関わらず、お金が手元に残らないという悩みを抱えています
個人診療所にお金が残らない原因①
先に挙げたような個人診療所にお金が残らない原因として、次のようなキャッシュアウトが挙げられます。
(1) 借入金の返済
*借入金の返済は、元金については、経費になりません。税金を納税した可処分所得から元金の返済を行います。
*借入金の金利状況によっては、借り換えを検討する余地はありますが、昨今の金利情勢は、極限まで金利が低下しているため、見直しの余地がないことが多いです。
*医療機器や運転資金の返済期間は、約10年、建物や土地の返済期間は、約20年位です。医療機器のリース契約は、6年です。
(2) 税金の支払い
*個人の所得税は、累進課税です。所得が高ければ高いほど税金の負担が重くなります。
*2015年の税制改正以後、4000万円以上の所得の場合、最高税率55%
(所得税45%・住民税10%の合計)になりました。
*大抵の医療機器の減価償却期間は、約6年、リース期間も6年です。
開業6年が経過すると減価償却費用、リース料(経費)がなくなり、所得が増え、一気に税金の負担が重くなります。
(定額法の場合、償却費用は、経過年数に比例して減少していきます)
個人診療所にお金が残らない原因②
個人診療所のドクターは、年間を通じて、様々な税金の支払いに追われているのが実情です。まず、年2回(7月、11月)、所得税の予定納税をしています。前年度に納税した所得税の3分の2を、翌年に2回に分けて先払いするのです。
また、前年の所得に対して計算された住民税を翌年 4回(6月、8月、10月、1月)に分けて分納しています。さらに、自由診療に対して上記以外に事業税が課せられ、自由診療の収入が年間1000万円以上のクリニックには、消費税も課せられます。
「財務アドバイザー」として、ポジショニングを取ろう
繁栄している個人診療所ほど、借入金の返済や税金の支払いといった日々の資金繰りに苦慮しています。
そのような課題を抱えているドクターに対して、私たちが、取るべきポジションは、「財務アドバイザー」です。財務アドバイザーとして、適切なアドバイスを行う必要があります。
今回、ご説明したこと以外にも、医師が税金を重いと感じている要因はあります。次回の記事では、その要因を解説し、私たちがターゲットにすべきクリニックに関して、マーケティング的観点から整理していきます。
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