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【知識】医療経営の法人化に伴う社会保険料節約のポイント

【知識】医療経営の法人化に伴う社会保険料節約のポイント

社会保険料とは、健康保険料、厚生年金保険料、および40歳以上から64歳までの方には介護保険料が発生します。医療機関を個人から法人化した場合や、常時5人以上の職員を使用する個人医院の場合、社会保険へ強制加入となってしまい、税金と同じように毎月発生する保険料により経営を圧迫させる場合があります。

社会保険料を節約するには、毎月の報酬を低く設定する必要があります。しかし、職員の報酬を下げることは職員の生活にも密接に関わる給与を下げることになり、また不利益取り扱いとなる可能性もあるため実際に報酬を下げることはかなり困難になります。

そこで、例えば個人から法人になる予定がある医療機関の場合、先に医師国保や歯科医師国保といった医療機関専門の国民健康保険(以下、「医師国保」。)へ加入することにより、その後、法人化した際に、上記の国民健康保険と社会保険の健康保険(以下、「健康保険」。)を併存させることが可能です。

医師国保と健康保険の大きな違いとして、医師国保の場合、報酬がどんなに高くても、毎月の保険料は一定額となります。逆に健康保険の場合、毎月の報酬額に沿って保険料が段階的に増えるようになります。

一方で、先生の配偶者やお子様など、ご家族を被扶養者として加入させたい場合、健康保険なら、人数に関係なく被扶養者分の保険料は発生せず、本人負担分のみとなります。しかし医師国保の場合、加入させたご家族分の保険料も発生するため、その分多くの保険料を負担することになります。

また、原則として、社会保険はクリニック側と職員とで保険料をそれぞれ折半しなければならず、クリニック負担分が必ず発生します。しかし、医師国保の場合は本人のみの負担で済ませることが可能です(そのため、クリニックによっては、医師国保加入者に対して、いくらかクリニック側で負担してあげる場合も見受けられます)。

節約ポイントとして、先生や看護士など報酬の高い職員は、医師国保へ加入、受付事務など報酬の低い職員は、社会保険の健康保険に加入させるといった取り扱いをすることで、ある程度の保険料を抑えることが可能です。

法人化における、医師国保と社会保険(健康/介護保険)の保険料の違い

クリニックの先生(42歳)月額報酬額200万円

ご家族…奥様とお子様2人 ※奥様は法人化により国民年金第3号被保険者を取得

【千葉県医師国保(月額)】

健康保険料:33,500円
健康保険料(ご家族):16,500円(5,500円×3人分)
厚生年金保険料:55,267円
クリニック負担分保険料:55,267円(厚生年金保険料のみ)

【協会けんぽ(月額)】

健康保険料: 69,014円
介護保険料: 10,981円
ご家族の健康保険料: なし
厚生年金保険料: 55,267円
クリニック負担分保険料: 135,262円(健康保険+介護保険+厚生年金保険)

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看護職員(45歳) 月額報酬額40万円

ご家族…お子様4人

【千葉県医師国保(月額)】

健康保険料:12,800円
健康保険料(ご家族): 22,000円(5,500円×4人分)
厚生年金保険料:36,547円
クリニック負担分保険料: 36,547円(厚生年金保険料のみ)

【協会けんぽ(月額)】

健康保険料:20,357円
介護保険料:3,239円
ご家族の健康保険料: なし
厚生年金保険料:36,547円
クリニック負担分保険料:60,143円(健康保険+介護保険+厚生年金保険)

➡医師国保を選ぶことで、年間約30万円のクリニック負担を節約できる!

事務職員の旦那様が企業の社会保険に加入していれば、お子様4人を旦那様の社会保険の被扶養者として加入させることで、職員の保険料も軽減できます。

 

受付事務職員(23歳)月額報酬額19万円

ご家族…なし(未婚)

【千葉県医師国保(月額)】

健康保険料:12,800円
厚生年金保険料:16,937円
クリニック負担分保険料:16,937円(厚生年金保険料のみ)

【協会けんぽ(月額)】

健康保険料:9,434円
厚生年金保険料:16.937円
クリニック負担分保険料:26,371円(健康保険+厚生年金保険)

この場合、医師国保に比べ健康保険料の方が、本人の負担は少なくなりますが、クリニック負担分に折半分の健康保険料も含まれるため、協会けんぽの方が1万円弱の負担増となります。

 

それでは、今回の場合も医師国保へ加入させたが方が良いのでしょうか?

実は、医師国保には産前産後休業に対する手当金は支給されません。この職員は未婚であるため、今後、結婚・出産という、人生のイベントが発生する可能性があります。労基法上、産前6週間、産後8週間は原則休業させる必要があるため、仮に職員が産休に入った場合に国からの手当が支給されないと、当該職員は生活に苦しむ場合もあります。

では、産休中の保険料もクリニックが負担するかというと、社会保険では産休・育休中の健康保険や厚生年金保険料は免除となるため、クリニック負担も免除となります(最大、お子様が3歳に達するまで免除が可能)。逆に医師国保の場合、産休中であっても保険料は納付しなければならず、職員の立場からすると、なぜ医師国保ではなく、健康保険に加入させてくれなかったのか不満に思う可能性もあります。

さらに、産休・育休からの復帰後すぐの勤務は、日数も労働時間も少なくなるのですが、そのような場合にも社会保険であれば復帰後の保険料を低くできる措置が用意されております。

職員の将来も考え、協会けんぽへの加入を検討された方が良い場合もあるのです。

 

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