
医療法人化に対してYESと答える医師・NOと答える医師への対処法&医療法人化のメリットを活かすには
こんにちは。私は、開業医専門FPとして活動をしております「三橋 泉」と申します。このブログでは、開業医を顧客にしたい保険営業パーソン、FP、税理士の方のために、営業方法に関するノウハウをお教えしていきます。
これまでの記事では、医療法人化を検討している・していない院長先生に対してどのような情報を提示すればいいかを紹介していきました。今回の記事では、それらのまとめをしていきます。
法人化の質問に対してYESと答えた場合は
●医療法人について情報提供する
(1)留意点について説明する
医療法人化するときの留意点については、前回のブログを参考にしてください。
医療法人化を検討している・していない院長先生に保険営業パーソンが話すべきこと
(2)法人化メリットを生かすためのポイントについて説明する
医療法人化した場合、借入金と税金、保険料を効率化します。借入金(設備資金、医療機器)は、法人に引き継ぎ、保険は法人で契約することで、今まで、加入していた個人保険を削減することができます。
個人保険の加入目的はご自身や家族の生活保障になりますが、法人保険だと、法人の事業保障のみならず家族の生活保障をカバーすることができます。
収入を個人と法人に分けることで、税金を効率化します。日本では法人より個人の税率が高いため、法人に振り分けることで、節税が可能となります。
医療法人にすると、手取額の計算も変わりますが、男性が医師で既婚者の場合、配偶者が理事になるケースがほとんどです。家計が一緒であれば、毎月の家計費(生活費、住宅ローン、保険、貯蓄、教育費)を算出し、そこから逆算し理事長や理事の給与を設定しましょう。
生命保険の活用をしましょう。医療法人での契約をする目的には、事業保障と家族の保障、利益の繰り延べをし、利益の平準化することにあります。さらに役員退職慰労金の準備をし、引退時、退職金を受け取り老後資金として活用します。
●保険提案の許可を頂く
当たり前ですが、保険営業マンは保険提案をし、お客様から契約を頂くことで初めて利益が得られます。医療法人化のメリットを最大化するためには、保険の活用が必要不可欠となりますので、医療法人のメリットを説明する過程で保険の提案は、自然の流れで
ご快諾頂けます。
院長先生によって提案するべき保険は変わってきます。院長先生にじっくりヒアリングをし、必要かつ最適な保険を提案しましょう。
法人化の質問に対してNOと答えた場合は
●考えていない場合に耳を傾ける
まずは院長先生が医療法人化を考えていない理由をしっかり聞き出しましょう。
●考えていない理由が間違った認識である場合、丁寧の説明し誤解を解く
●法人成り(税額)シミュレーションを行う
法人成り(特に税金関連)のシミュレーションを行い、院長先生に客観的な証拠を提示しましょう。
●メリットとデメリットを天秤にかける
医療法人化するメリットとデメリットを天秤にかけ、医療法人化の判断基準を提供しましょう。
●解決策を提案する
顧問税理士が医療法人化に対応できない場合、提案は、以下の2つです。
(1) 顧問税理士の交代を促す。(顧問税理士のスイッチング)
(2) 設立業務のみ請け負う
※(1)については、以下のようなスイッチングコストが生じます。
- 経済的な負担
→違約金、追加費用 - 心理的な負担
→現在の顧問税理士を断るストレス - 心理的な不安
→「新しい税理士が、期待値を満たしてくれるのか」という不安
スイッチングコストより顧客の不満+代替え案の魅力が上回れば、スイッチングに応じて
くれます。
医療法人化を考えていない院長先生に医療法人化について理解してもらい、誤解を解くことが出来れば、「医療法人化した方がいい」と納得してくれます。ここで税理士が障害になっていることが多いので、上記の解決策を提示し、こちら側の提案に応じていただいた場合、保険関連については、全て任せられることになります。
最終的には、院長先生に判断を仰ぐ
医療法人化するメリットを活かすためのポイント
理事長(先生)と理事(配属者)が夫婦の場合、家計が一緒になっているケースが多いです。その場合、毎月の生活費を算出し、その家計費から逆算して理事長と理事の給与を決めましょう。
また個人事業主時代は専従者給与を配属者に支給していることが多いですが、月々40~50万円位が上限で、これ以上高くなると税務署から否認されることも考えられます。
しかし理事給与だと、役員給与としてある程度の額まで認められます。医業収入、経常利益、理事長給与等、総合的に勘案して理事給与として認められる金額まで引き上げるようにしましょう。
医療法人化に伴って、法人契約をするのは
- 事業保障
- ご家族の家族保障
- 利益を繰り延べる
- 役員退職慰労金を準備する
ためです。
事業保障は理事長がいなくなったあとも法人を続ける場合と、解散する場合とでは考え方が異なります。
存続する場合、理事長先生がいなくなることで生じると思われる売り上げ低下をカバーするために必要な保険金額を事業保障として検討しますが、解散する場合は従業員の未払い給与や退職金、売掛金、法人債務で必要な金額を準備するために事業保障を検討します。
ご家族の家族保障は、法人から死亡退職金+弔慰金を家族が受け取れますが、死亡退職金は最終役員報酬月額 × 在任年数 × 功績倍率(3倍)が1つの目安となります。
早期死亡で多額の保険に加入していた場合、保険金の全額を死亡退職金で経理処理できなくなる(過大退職金となり、過大部分が損金不算入になり法人税が課せられる)こともあるので、個人保障と法人契約のバランスを取る必要があります。
理事長と配属者の老後資金を医療法人で準備するためのお金です。個人事業主の場合、退職金を受け取れませんが、法人の場合、退職金を受け取れることができますので、税制上有利な退職所得として課税されるのが、医療法人化のメリットになります。
川上営業と川中営業、川下営業
保険に限らず、営業は川上営業と川中営業、川下営業に分類されます。一般的な保険営業では、すでに加入意思がある人をターゲットにする川下営業が行われていますが、すでに加入意思があるため、この段階でのアプローチは、ライバルが多く条件競争(保険料、返戻率)に巻き込まれレッドオーシャンとなってしまいます。
そこで最近では、お客さんの困りごとや課題を聞き出し、それに対しての解決策(ソリューション)を提供するソリューション営業(川中営業)が主体となっていますが、ライバルは、日頃、ソリューション営業を意識して活動しているため、差別化できません。つまり、この段階(川中営業)でのアプローチも川下営業と同じで、レッドオーシャンと化しています。
そこでお客様がニーズに気付いていない、課題が明確になっていない段階(川上)で、アプローチすることでブルーオーシャンな市場を作り出せます。
特に、医療法人化を考えていない場合、先程の順番で丁寧に説明することで、
法人化を考えていない → 法人化を考える。
つまり、180度、院長の考え方が変わることで全てを任せていただける状態となり、ライバルは、いなくなります。
まとめ
今回は、医療法人化したい院長先生と、そうでない院長先生に提供するべき情報と、医療法人化のメリットを生かすためのポイント、保険営業の基本姿勢を紹介してきました。
基本的に、保険営業マンは医療法人化についてドクターからどのような質問をされても答えられるようにしなければなりません。日々、医療業界や医療法人に関する知識習得のため、関連する書籍の購入やセミナーに参加するなど、自己研鑽を図ることを心がけましょう。